槍ヶ岳登山記録
記録:吉田(みなし公務員)
夏場の恒例・アルプス企画として,今年は北アルプスの名峰・槍ヶ岳に挑んだ.
出発直前になって特攻隊長・本田さんの負傷,参加断念という波瀾に見舞われたが, 代わるリーダとして穂高マスター・中谷さんの参加をあおぎ,無事決行の運び.
7月28日早朝.
肌寒い上高地に永井さん,中谷さん,西村さん,吉田,中村さんと相次ぎ集結.
かっぱ橋での記念写真を撮って,さァ出発である.
初日は,槍沢を経て殺生ヒュッテに到る,遥かなる道程.
序盤は平坦路であるが,ひさしぶりの重装備がズッシリと両肩に食い込む.
小休止を入れた横尾には,「←11km 上高地 / 槍 11km→」との看板が.
めざす殺生ヒュッテは槍の直下.
つまり,この日だけで,実に20km近い行程を踏破することになる.標高差は1600メートル.
いつぞやの東山縦走に匹敵するコースを,
二泊分の食糧を背負って克服するわけである.今更ながら気が滅入る.
槍沢ロッジ前で昼食.早々に出発.
このあたりから視界の正面に槍ヶ岳を捉えるが,槍の切先はガスに包まれ,
ターゲットは未だに遠く霞む.
槍沢を過ぎると,一転して急峻な登りが続く.疲弊した体に応える.
大曲あたりでは半ば意識朦朧となりながら,まさに一歩ずつ踏みしめるように歩く.
やっとの思いで殺生ヒュッテに到着したころには,西日が翳り始めていた.
二日目は,行程に余裕があるので,のんびりと出発.
殺生ヒュッテを発ち,槍岳山荘を経て,いよいよ山頂へ.
朝日が眩く降りそそぐなか,槍ヶ岳(3180m)登頂.
さいわい後続が途切れたため,すこし腰を落ち着けて360度の眺望を楽しむ.
天候も好く,北アルプスの山々や笠ヶ岳は勿論のこと,
遠く見やれば白山から御岳,中央アルプス,南アルプス,富士山,八ヶ岳といった
パノラマを存分に味わった.
ここで槍ヶ岳に別れを告げ,大喰岳・中岳を経て南岳を目指す.
中岳を過ぎた鞍部では,雪渓からの涌き水が流れになっており,小休止.
直射日光にさらされながら尾根道の縦走だったので,雪融け水の冷たさが殊のほか快い.
正午ごろ南岳に到着し,昼食.
南岳小屋で日清ヤキソバ「UFO」を400円で売っており,
高度2800メートル,沸点91℃のお湯で作るUFOを誰か食べてみろという雰囲気になったが,
チャレンジャーは現れず.
この時間帯には周辺はガスに包まれており,眺望は皆無.
大キレットを一目みたいと西村さんが穂高のほうへ少し登ったが,何も見えない.
ならばいっそ大キレットを目指すか,との気配も浮上したが,
槍ヶ岳の岩登りにも窮々としていた吉田が泣きを入れたところ,
リーダ・中谷さんが妙に深々と納得し,予定どおり槍平を目指すことに.
南岳から槍平への下りは,
歩き初めて間もないハイマツ帯でライチョウと遭遇したあたりではゴキゲンな行程だったが,
進めば進むほどに思いもかけない難所の連続.
快調に下る中谷さんをよそに,宅間研山岳部の面々は大苦戦.
コースタイムから大幅に遅れつつ,ようやく槍平にたどりつく.
槍平小屋で一泊.
茶色いオコジョも姿を見せた小屋前の炊事場で夕食を摂り,
日没まで語らう.
最終日は新穂高温泉までの下り.
朝モヤに包まれるみずみずしい森林の空気が心地よい.
疲労は蓄積しているが,快調に歩きつづける.
途中,滝谷出合で休憩.永井さんが写真を撮りまくる.
そう言えば今回の行程は,とにかくタフで,写真を撮る余裕もなかった.
やがて,新穂高温泉に到着.
バスで平湯温泉に移動して昼食を摂り,松本へ向かう吉田はここで別れ,
一行は飛騨へ向けて帰途に着いた.
(Fin.)